施設クラスター支援の現場でマネージャーとして挑戦！飯野医師インタビュー

新型コロナの流行時期に、訪問診療を行いながらクラスター施設にも率先的に対応していた飯野医師。その中で見えてきた、自分自身の役割やチームで活動することのやりがいを伺いました。

飯野貴明 医師 / 葛西医院（大阪市）

千葉大学総合診療科の家庭医療専門医プログラムを経て、2021年より葛西医院にて大阪市内の訪問診療に従事。KISA2隊では、大阪クラスター支援部隊隊長を務める。

KISA2隊立ち上げとコロナ対策への挑戦

2020年8月、新型コロナウイルスが流行のさなか、大阪でも「KISA2隊」をやるぞ！と、勤務先の葛西医院の院長・小林先生が立ち上がりました。それから半年ほどの間、小林先生がコロナ対応で非常に多忙な状態になったので、代わりに僕が新規の訪問診療をほぼ全て受け持つことで乗り切りました。

翌年2月、KISA2隊がクラスター施設の対応でゼビュティを打ちに行くことになったため、そのお手伝いをする形で私もKISA2隊に本格参加しました。その時は医師3人だけで現場入りしていまして、看護師のサポートなどもなかったので、全員で点滴に苦労しました。なかなか針が入らず、手こずったことをよく覚えています。

１ヶ月半ぐらいの間に40施設の対応をしました。19時や23時から作業開始する日もありましたが、日中は別の仕事をしているので、仕事終わりに行くしかなかったんですよね。最初は医師自ら、ゼビュディを持って行って現場で溶かして打つみたいな運用で大変でした。後に、看護師が事前準備をしておいてくれる体制になったので、現場に入ったらすぐ支援開始できるようになり助かりました。

KISA2隊のクラスターチームで学んだ、マネージャーとしての視点

クラスター対応への支援って、治療などの助言の場面が少ないんですよね。それよりも、介護現場の目線でアドバイスしたり、日常生活の動線を考えたりすることがメインになります。この業務を通じて、今まで関わらなかった職種や立場の人たちと様々な角度で関わることができ、自分のキャリアにとって大きな収穫となりました。

普段の診療ですと自分がプレイヤーですが、KISA2隊のクラスターチームに関しては、マネージャーという立場になります。一緒に働いているメンバーたちの可能性を、なるべく大きくできるようにパスを出していくことを意識しながら、その人の良さを発揮してもらえるような環境作りを心がけました。

トラブルもたまに発生しますが、早めに対応して解決できるように心がけました。人間関係の構築も自分の役割だと考えていて、そういうところがやりがいに繋がっています。クラスターチームは何もないところから、メンバーみんなでブラッシュアップして診療の改良をしてきたので、これまでの積み重ねを考えると思い入れは強いですね。

クラスターチーム・きばこさんより一言

飯野先生が、ふとご自身の欠点について自分から話してくださったことがありました。その時、自分の弱い所を出しても受け入れてくださる先生なんだ、と思ってすごく安心しました！チームのみんなを信頼して、頼ってくださっている事を感じて嬉しかったです。

今は感染が落ち着いてきたこともあり、施設支援における僕たちの役割も変わってきていることを感じます。感染症はコロナに関わらず発生するので、今後も施設における感染制御のニーズはあると考えています。クラスター発生時の支援だけではなく、最近は振り返りの会をやっています。施設の都合に合わせて訪問して出来るので実施しやすく、これからもやっていきたいと思います。

患者の選択肢を広げる – KISA2隊と在宅医療の可能性

往診医としては、もう少し在宅での療養を選択肢に入れてもらえるような、何か取り組みができればいいのかなと思います。医療を家で受けた経験やイメージがなく、病院で最期を過ごす選択肢しか知らない方って多いんです。

住み慣れた家で最期まで過ごすというのは、本人とその周りの家族が希望すれば叶えられる医療体制は、すでに出来ていると思うんです。身の回りのことは自分で出来る間は家で過ごしたいけど、体調を崩してしまった時は在宅療養に頼りたい、みたいな人がもう少し増えると患者さんの選択肢は広がります。

とはいえ、まだまだ医療機関と密な連携が取れていない在宅医療の現場も多いと思うので、KISA2隊のようなプラットフォームがそういった地域のお手伝いをできると良いと思います。メンバーと試行錯誤しながら支援を続けて、素晴らしいチームを作ってこられたと思っていますので、これからもKISA2隊の皆さんとさまざまな活動をしていきたいです。

飯野先生、本日はありがとうございました！