開業と同時に立ち向かったコロナ、オンライン診療と地域医療への挑戦 – 岩下医師 インタビュー【KISA2隊 大分】
2020年より大分に「岩下クリニック」開業。外科、消化器科、内視鏡外科を中心に従事。日本内視鏡外科学会技術認定(肝)や日本肝胆膵外科学会高度技能専門医など厳しい試験をクリアし、前任の大学病院では数多くの手術を執刀。2020年よりKISA2隊大分の隊長として、地域の感染症対策や啓発活動にも力を入れている。
医師の道から国際貢献、そしてクリニック開業までの27年間
平成7年に医学部を卒業し、医師としての道を歩み始めたのが27年前。これまでは大学の医局に籍を置き、腹腔鏡下肝臓手術など、高難度手術に挑戦してきました。また、国際ガイドラインの制作委員を務めるなど、多くの実績を積んできました。
4年前、地元大分で以前より交流させて頂いていた、諏訪の杜病院の武居先生より、ケニアでの医学指導へ同行して欲しい、とお声かけいただきました。
1週間の短期間ではありましたが、内視鏡を触ったことがない若い医師たちへ内視鏡の指導をする機会を頂きました。その際に大自然との接触を通じて人生観が一新。「自分の求める方向へと舵を切っても良いのでは?」と自問自答するようになりました。
自身のクリニック開業を決意した頃、ご縁あり、杵築市でクリニックを開業しておられた藤原先生と交流させて頂くことになりました。これをきっかけに、地域の方々から深い愛情を受け続けてきた「藤原整形外科クリニック」を私が受け継ぐこととなりました。
そして2020年4月、ついに「岩下クリニック」を開業。藤原先生からの丁寧なサポートのお陰で、これまでの患者さんたちのフォローアップも円滑に行うことができました。
パンデミックとの戦い – 岩下クリニックの開業からKISA2隊との出会い・入隊まで
開業と同時に、新型コロナウイルスが世界を揺さぶりました。志村けんさんの訃報に接し、未知のウイルスに対する不安と戦いつつ、医師として立ち向かう道を模索しました。
感染の波は大分にも訪れることは必至と理解しつつも、第5波を迎えるまで積極的な取り組みが果たせず、新型コロナウイルスに対する本腰の対応の必要性を強く感じていたところ、テレビで新型コロナウイルスに対する往診を行っている医師の姿を目の当たりにしました。
その衝撃を受けて、「関西」「コロナ」「在宅診療」のキーワードで検索したところ、KISA2隊が検索結果として出てきました。
KISA2隊のホームページを閲覧すると、ジャパンハートで知り合った奥先生や、「風に立つライオン基金」との繋がりを知り、自分が求めていたことがこれだと確信。すぐさまKISA2隊のメンバー募集に応募しました。
啓発活動の重要性を痛感、孤立する自宅療養者に「ほほえみバッグ」がもたらす笑顔
KISA2隊での活動初日は、オンラインミーティングに参加することでした。大分の大学病院の先生方と共に、KISA2隊の小林先生や奥先生とお話しさせて頂き、KISA2隊大分の決起集会となりました。
新型コロナウイルス第5波が到来した2022年8月のことだったと思います。私の地域では、すでに保健所との連携が取れている段階であり、その後すぐ自宅療養サポートチームとして活動開始へと踏み出しました。
活動の中で、自宅療養者の孤立化という課題に遭遇。第7〜8波の頃、コロナウイルス感染者が出ると「銀行で(コロナ患者が)出た」などという表現が、あたかもお化けが出たように伝わり、その事実が気になりました。田舎の保守的な面が、未知の存在に過剰に反応する影響があったと思われます。
「誰でも感染可能性がある」という事実や「意図せずとも感染を広める可能性がある」という、正しい知識を伝えることの重要性を再認識し、間違った認識を正す啓発活動に力を入れることとしました。
その中で、自宅療養で孤立してしまった家族との出会いがありました。母親は30代で、乳がんの手術を受けた後に、抗がん剤治療を受けていた方。コロナウイルス感染後の不安が強く、食事を摂れずにいたため、「ほほえみバッグ」を持参して訪問しました。
「おかゆなどは食べられませんでしたが、ポテトチップスだけなら食べられました」と笑顔で話してくれ、その笑顔が一番の達成感をもたらしてくれました。コロナウイルスによって孤立した人々を笑顔にすることができたのは良かったと思います。
オンライン診療と地域医療、杵築市から世界への挑戦
今後はオンライン診療に力を注ぎたいと思います。外来診療中に在宅の患者さんからコールがあってもすぐ診にいくことはできませんが、オンライン診療を行えば、その後の患者さんとのコミュニケーションは楽になると考えています。
とはいえ、地域で医療連携していくことは難しく、実績を重ねていくことが必要だと感じています。入院しなくとも在宅で診ていくことができる患者さんもいるでしょうし、何かあったらすぐ救急車ではなく、まず地域の診療所の医師に相談することができるようになるといいですね。
現在、杵築市の人口は3万人ですが、5年後には2万人にまで減少すると予想されています。しかし、この人口減少は杵築市だけの問題ではありません。
ここから今あるさまざまな問題に立ち向かい、新しいことにチャレンジしていくことで、杵築市から大分へ、大分から日本中、世界中に広められる取り組みが社会に必要とされる医療の提供につながると考えています。
岩下先生、本日はありがとうございました!
施設名: 医療法人アドナイ 岩下クリニック
所在地: 〒873-0001 大分県杵築市杵築665番地655
電話: 0978-66-4055
HP: https://iwashita-c.jp