メンバーインタビュー

職人の道から医者の道へ – 奄美大島でのコロナ対策とKISA2隊との絆【KISA2隊 奄美大島】

奄美大島で地域医療に携われている野崎先生。島内でコロナの感染が拡大し、病院のキャパオーバーで在宅診療が必須の状況に。既にご自身でも献身的に活動されていた中で、KISA2隊から得た気づきとは?

野崎 義弘 医師 / 奄美市住用国民健康保険診療所 所長(鹿児島県 奄美市)

昭和36年、鹿児島県姶良郡福山町(現在 霧島市)生まれ。鹿児島大学医学部を卒業後に勤務医を務めた後、平成16年に無医村であった奄美市住用町(元住用村)にて、奄美市住用国民健康保険診療所の所長に就任。地域の人々の身近な存在として医療に従事しながらも、ICTの活用や医師会の在宅ネットワーク世話人を務めるなど、地域医療の質を底上げするための活動を行う。弓道、バレーボール、陸上(100m)など多数の趣味あり。家族は妻と3人の子供。

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料理人から医師へ:家族の教えと兄の影響での人生の転機

私は、鹿児島の福山町で生まれ、鹿児島市内へ3歳のときに移住しました。親父から「職人になれ。人から使われるんじゃない、手に職をつけて食っていけ」という教えられて育ったもので、自分は将来、職人になるんだと思ってました。

高校も行くつもりはなく、当時の人気テレビ番組「前略おふくろ様」に出てくる板前にあこがれて、料理人を目指してたんです。しかし、意外にも兄が医学部に進学することに!

それにより、医者もまた一つの「職人」であると気づきました。そう、医者は高度な技術を持つ究極の職人です。その気づきから医学部を目指し、受験の難関を乗り越えました。

学生時代はあまり真面目に勉強していなかったのですが、人の世話や情報収集が好きだったため、国家試験の対策委員に立候補し、同級生へのサポートを熱心に行っていました。

研修先になりそうな施設を調べてパンフレットを取り寄せて、同級生に「こんなところがあるよ」って教えたり、「卒業どうするの」とか相談に乗ったり。今と同じようなことを、ずいぶん昔からやっていますね。

奄美大島のコロナ危機とKISA2隊との出会い

KISA2隊の存在は、ネットでの情報収集中に知りました。コロナの在宅診療に取り組む、若い先生たちがいるチームだと聞いて興味を持ったのです。

当時の奄美大島ではコロナのクラスターが何回も発生し、患者さんが入院できない状況が生じていました。ある病院では4床しかコロナ病床がない状況で、50人近くのコロナ患者さんを診てるなんて話もあったくらいです。

患者さんの増加に伴い、自宅での診療を行うしか選択肢がなく、特に施設クラスターが発生した際は施設内での診療が不可欠でした。

私は地域の医師会でコロナ担当を引き受けていましたので、診療が終わってから毎日ずっとZoomミーティング。ひどい時にはセミナーや打ち合わせが同じ日に4つも重なったり、土日返上でワクチンの接種をしたりと、非常に多忙な日が続き、心身共に疲れていたんです。

そんな時、小林先生が主催するオンライン勉強会が開催され、実際のコロナ在宅診療のやり方を教えてもらえるという事で参加しました。

内容が非常に興味深く、あれこれ質問しまくっていたら「先生、奄美でKISA2隊やってみませんか?」と声をかけていただき、オンライン定例会に参加するようになりました。

奄美のメンバーに「KISA2隊に参加してみたいんですが、どう思います?」と相談したら、皆から「野崎先生、今も十分に忙しいのに、さらにKISA2隊まで手を出したら死んじゃいますよ」とビックリされてしまって。

結局、同じ奄美で在宅診療で有名な徳田先生が隊長を引き受けてくださることで、KISA2隊奄美大島が発足することとなりました。

全国の同志との繋がりが、新たな勇気を与えてくれた

KISA2隊の特に良いと感じることは、開かれた雰囲気と仲間との絆です。2022年の秋に開催された柱合会議に参加し、短い時間でしたが、志を同じくする全国のメンバーと会って元気をもらいました。

KISA2隊の先生は自分の患者さんを見るのはもちろん、他にもコロナで困っている人がいるなら、自分にできることがあるなら、何でもやろう!という高い志を持っていらっしゃるところが素晴らしいですね。

私も以前から地域の勉強会の開催や医療者ネットワークの世話人をしてきましたので、その知識と共に、情熱や思いをKISA2隊のみなさんと共有できることは、非常に心強いです。

コロナはいずれ終息するかもしれませんが、新たな感染症の脅威は常に存在します。KISA2隊がこれまで培ってきたネットワークや経験を、次世代へと継承していくことが大切だと思います。

一人の力は限られていますが、KISA2隊のような共同体が情報や経験を共有し合うことで、より強い力となることを信じています。私もその一員として、これからも尽力していきたいと思います。


野崎先生、本日はありがとうございました!

施設情報

施設名: 奄美市住用国民健康保険診療所
所在地: 〒894-1202 奄美市住用町西仲間111番地
電話: 0997-69-2620
HPhttps://sumiyo-clinic.com/

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